「IaaS(Infrastructure as a Service)とは?」ホスティングサービスとの違いは?|SaaS連携の専門家が分かりやすく解説!
ここ数年、アプリケーション開発やWEBサービスの提供企業界隈で少しずつおなじみとなってきている「IaaS」という単語。
実は開発側にとって、たくさんのメリットがあるサービスなのです。
本コラムでは、IaaSの概要・特徴に加え、ホスティングサービスとの違いや関連する〇aaS的用語やIaaSによって得られるメリット・デメリットをわかりやすく説明します。
目次
IaaSとは?
IaaS(Infrastructure as a Service:イアース、アイアース)とは、直訳で「サービスとしてのインフラストラクチャ」で、
インターネット経由でサーバー、OS、ネットワーク機器、記憶装置などのインフラを提供するサービス、または形態のことを指します。
インフラとは?
IaaSの理解を進める前に、インフラ(Infrastructure)について整理しておきましょう。
インフラとは「生活・産業などの生活活動に欠かせない社会基盤」の総称であり、水道・ガス・電気・道路・通信などのライフライン全般を指します。
一方、IaaSの語源となるInfrastructureはIT分野における基盤の要素やその設備を指します。
ハードウェアとソフトウェアに大別され、具体的には以下の要素・設備です。
<ハードウェア>
・PC
・ストレージ★
・サーバー★
・ネットワーク★
<ソフトウェア>
・OS★
・ミドルウェア
IaaSはインターネット経由でこれら(★部分)のインフラを使えるようにしてくれるサービスなのです。
※サービスによっては「OSが含まれない」など若干の要素の違いはあります。
もう少し詳しく説明していきます。
なぜIaaSが必要なのか
従来、社内でインフラを構築する場合、インフラの管理・運用・保守を自社で行う必要がありました。
IaaSではインターネット上で設定と申し込みを行うだけでサービス提供事業者側がインフラを用意してくれるため、
スペックの変更やカスタマイズも容易かつ迅速に行えるようになります。
ホスティングサービスとの違い
インフラを用意してくれるサービスといえば、ホスティングサービスを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。
ホスティングサービスとは、Webサーバーなどをインターネット経由で借りることのできるサービスを指します。
(レンタルサーバーと呼ぶこともあります)
反対に、サーバーを自社で保有する場合は自社サーバーと呼び、物理的にサーバーを自社の財産として保有・管理します。
ホスティングサービスとIaaSには以下3点の違いがあります。
料金体系
従来のホスティングサービスの多くはプランに応じた月額固定費用ですが、IaaSの主流は従量課金制となっています。
IaaSでは利用したリソースに対して料金がかかる仕組みとなっており、基本料金や解約料金は原則 必要ありません。
Amazon EC2の例:インスタンス(仮想マシン一つひとつの呼称)が稼働している時間ごとに請求される
一定期間内でアクセス数に波があるシステムや、戦略的にアクセス数の急増が見込める場合に特に適しています。
スケーラブルに対応可能である反面、月額の費用はあらかじめ概算のみでしか予想できません。
月額固定のホスティングサービスとは異なるため、アクセス数の急増など外的要因には注意が必要です。
カスタマイズの自由度
サーバー周りの知識が必要になりますが、IaaSではCPU・メモリ・ストレージなどのカスタマイズがある程度 自由に行えます。
またOSについてもホスティングサービスでは選択できませんが、ほとんどのIaaSではユーザー側が選択できます。
柔軟性
IaaSではスケールアップ(サーバーのスペック増強)・スケールアウト(サーバーの台数増)、またメモリのスペックなどを自由に変更することが可能です。
ホスティングサービスの場合も契約プラン変更は可能ですが、切り替えに即時性はあまりありません。
サービスの利用状況によって、そのとき必要なスペックに容易に切り替えられるフレキシブルさがあります。
またホスティングサービスではサービスの申し込みから作成まで時間が掛かることもありますが、IaaSはクラウド上で即時完結できます。
VPS・共用サーバー・専用サーバーとの比較
VPS(Virtual Private Server)とは直訳で「仮想専用サーバー」を意味し、物理的な一つのサーバーに対して仮想的に複数のサーバーを構築したものです。
共用サーバーは、物理的な1台のサーバーを複数のユーザーで共有します。
専用サーバーでは、物理的な1台のサーバーをまるまる1台利用します。
VPSもIaaSも仮想サーバーではありますが、VPSは契約時にプランに応じたリソースが割り当てられ、契約を解除し再契約をしない限り変更することができません。
IaaSはプランにもよりますが、基本的に契約はそのままでサーバーのカスタマイズを行うことができます。
PaaS、SaaS、FaaS、iPaaS、DaaSとの違い
iPaaSを調べる際に見かけることが多い用語についても、整理してみましょう。
〇〇〇 as a Service という単語構成になっており、〇の部分にどういったサービスを担うかの英単語が入ります。
PaaS(Platform as a Service)
PaaSとは、IaaSに加えてミドルウェアやプログラミング言語、管理システムといったアプリケーション開発に必要なものを利用(提供)できるようにしたものです。
Platform as a Serviceの頭文字をとって形成された単語です。
「パース」または「パーズ」と読みます。
PaaSの詳細についてはこちらのコラムをご覧ください。
SaaS(Software as a Service)
SaaSとは、開発されたソフトウェアをインターネット経由で利用(提供)できるようにしたものです。
Software as a Serviceの頭文字をとって形成された単語です。
「サース」や「サーズ」と読みます。
SaaSの詳細についてはこちらのコラムをご覧ください。
本コラムで説明するIaaSとあわせて上記3つは、提供するサービスの領域が異なります。
FaaS(Function as a Service)
FaaSとは、開発や業務に必要なサーバなどのインフラを、クラウドサービスに一任し、開発者がプログラミングに集中できるサービスを発展させたものです。
Function as a Serviceの頭文字をとって形成された単語です。
「ファース」と読みます。
特徴として、作成したプログラムに合わせて自動的にサーバを拡大、縮小(スケーリング)してくれることが挙げられます。
FaaSの詳細についてはこちらのコラムをご覧ください。
iPaaS(Integration Platform as a Service)
iPaaSとは、オンプレミス、またはSaaSサービスの複数システムでばらばらで管理している情報を連携・管理できるサービス、または形態を指します。
Integration Platform as a Serviceの頭文字をとって形成された単語です。
「ファース」と読みます。
iPaaSの詳細についてはこちらのコラムをご覧ください。
DaaS(Desktop as a Service)
DaaSとは、クラウド上で仮想デスクトップ環境を提供するサービスの一種です。
Desktop as a Serviceの頭文字をとって形成された単語です。
「ダース」と読みます。
テレワークの普及により着目されるようになりました。
従来のVDI(Virtual Desktop Infrastructure)では仮想デスクトップの環境を自社サーバー内に保有していましたが、DaaSではクラウド上に保有しているため管理はDaaS事業者が行います。
IaaSのメリット、デメリット
メリット
コスト削減
ハードウェア機器の購入などの必要がないため、初期費用を抑えられます。
ほとんどのIaaSが利用したリソースに対して料金がかかる仕組みとなっており、運用コストの面でも無駄を省くことができます。
※ただし、もし想定を超える数の負荷が掛かったなどの理由でスペックを上げた場合は費用がかさむおそれもあります。
加えて、自社サーバーで運用すると発生するメンテナンス費用やサーバーの保管場所や環境の維持費用についても、IaaSではサービス提供事業者の責任範囲となるためTCOの目線でもコスト削減につながります。
拡張性(Scalability)
インターネット経由でスペックを変更できるため、用途によって必要な機能やリソースを選び、いつでもカスタマイズできます。
クラウド上で即時完結できる点も見逃せません。
ホスティングサービスとの違いの項でも述べたとおり、サービスの利用状況によって、そのとき必要なスペックに容易に切り替えられるフレキシブルさがあります。
利用者の急増によって生じる負荷への対処にも、とても有効です。
可用性(Availability)
FaaSのメリットとも共通しますが、サーバーなどのインフラをサービス提供事業者が管理するため、BCPの対策にも効果があります。
BCPについてはこちらのコラム(FaaSのメリット>可用性)をご覧ください。
デメリット
サーバー(インフラ全般)の知識が必要
ホスティングサービスではサーバーにまつわる設定・運用・保守はサービス提供事業者側が行うため、サーバーの知識がなくとも運用を始めることができました。
IaaSではインフラの管理のみならず、OSやソフトウェアのインストールを自社で実施する必要があるため、サーバー管理の知識は必須といえます。
また、IaaSではインターネット経由で容易にサーバー情報を閲覧・変更ができる利点がある反面、ログイン情報の漏洩は重大なインシデントに繋がります。
不正アクセスされてしまうとサーバーが使えなくなる可能性もあるため、即座にシステムに影響を及ぼします。
自社サーバーでオンプレミス運用を行う場合よりも一層、情報セキュリティの管理を徹底する必要があります。
サービス終了の可能性がある
可能性としては高くはありませんが、IaaS事業者がサービスを終了するとどうすることもできません。
※SaaS、iPaaS、FaaSのデメリットと重なる部分でもあります。
システムの稼働率がIaaSに依存する
サービスがネットワーク上で提供されるため、アクセス集中やトラブルが起きると作業がストップする可能性もあります。
システム全体の平均修復時間(MTTR:Mean Time To Repair)に直接的な影響がありますので理解しておきましょう。
※FaaSのデメリットと重なる部分でもあります。
事例
Amazon Elastic Compute Cloud
「Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)」はAmazonが提供するAWS(Amazon Web Service)の機能の一つです。
AWSが提供する仮想サーバーは「インスタンス」という単位で表します。
マイクロインスタンスで1 年間 750 時間分の無料利用枠が用意されています。
料金体系が複数あり、利用者の状況に応じていずれかを選択することができます。
- オンデマンド:利用時間に応じて費用が発生する従量課金制のプランです。
- Savings Plans:1 年または 3 年の期間で特定の使用量を契約する代わりに、オンデマンドよりも最大72%のコスト削減が可能です。超過した分はオンデマンドと同じ料金が請求されます。
- リザーブドインスタンス(RI):事前にキャパシティを予約しておき、予約している枠の分のみインスタンスを作成できるプランです。
- スポットインスタンス:AWSクラウド内の使用されていないキャパシティを活用できるプランです。
Google Compute Engine(GCE)
「Google Compute Engine(GCE)」はGoogle Cloudが提供するGCP(Google Cloud Platform)の機能の一つです。
すべてのユーザーはe2-micro インスタンスの汎用マシンを一か月あたり1台無料で利用できます。
加えて、新規ユーザーは90日間にGoogle Cloudで使用できる無料クレジット $300分が用意されています。
料金体系はすべて従量課金制となっています。
マシンファミリーと呼ばれるいつくかの種類があり、マシンファミリーのなかで選択したマシンタイプにより価格が異なります。
基本的に、マシンタイプは事前定義されたものが用意されていますが、自身でカスタムを行うカスタムマシンタイプも選択することが可能です。
Google Cloudが提供している料金計算ツールで、事前にトータルの概算見積を計算することもできますので安心です。
Azure IaaS
「Azure IaaS」はMicrosoftが提供するAzureの機能の一つです。
コンピューティング、ストレージ、ネットワークの3要素で構成されています。
料金体系は個人ユーザーであれば基本的に従量課金制がメインとなっています。
Azure全体で、新規ユーザー向けにUSD200のクレジットが付与された12ヵ月分無料のサービスや、すべてのユーザー向けのUSD200が付与された無料サービスがそれぞれ用意されています。
同じMicrosoft製品であるOfficeソフトなどとも親和性が高く、主にMicrosoft製品を利用しているユーザーにおすすめです。
さくらのクラウド
「さくらのクラウド」はさくらインターネットが提供するIaaSです。
国内では最安値のクラウドサーバーです。
さくらのサービスはレンタルサーバーで有名となりましたが、IaaSであるさくらのクラウドでは他のIaaSと同様に、初期費用は掛からずサーバーの稼働時間に応じた従量課金制となっています。
国内企業だけあって日本語ドキュメントのため非常に見やすく、翻訳で発生する表現の問題などで迷うこともありません。
同社が提供するさくらのVPSからさくらのクラウドに移行することもできますので、さくらのVPSを使用しているユーザーは一度検討の価値がありそうです。
まとめ
オンプレミスやVPSよりも自由度が高く柔軟性にも優れるIaaSですが、恩恵を受けるためにはしっかりと設計した上で導入・運用を行う必要があります。
今後も世の中にはさまざまな種類のサービスが現れることかと思われます。
例えばインフラ周りであれば基礎となるサーバーやOSの基本的な知識があれば、そういったサービスの情報を即座にキャッチアップし、いち早く恩恵を受けることができるでしょう。
基本的な知識に加えて、世間の動向を常にチェックする情報収集力も問われています。
まずはIaaSから、是非導入を検討してはいかがでしょうか。
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多くの企業で、1社あたり10程度のSaaSを利用しているといわれています。
それだけSaaSは多くの企業に必要とされていることがわかります。 しかし、複数のSaaSを利用することで情報の分断や多重入力といった問題が起こるリスクがあります。
業務の効率化を求めて導入したはずなのに、複数のSaaS利用によって新規導入や効果的な運用の足かせとなることがあるのです。
ストラテジットは"SaaSのチカラを全ての企業に"をMissionに掲げ、創業以来 国内外50以上のSaaSとの連携開発を行ってきました。
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