LTV(ライフ・タイム・バリュー)とは?チャーンレート改善のためのデータ分析について学ぶ|いまさら聞けないカスタマーサクセス用語

LTV(Life Time Value)とは顧客生涯価値のことで、LTVが高いということは、「顧客が長期間にわたり、企業に対して安定的かつ持続的に利益をもたらす存在であること」を意味します。

SaaSをはじめとするサブスクリプション型ビジネスの急増により、旧来の一度購入するのみビジネスモデルでは用いられなかった概念です。
LTVはSaaSビジネスのKPIに設定されることも多く、特にSaaSビジネスに携わる場合は正しく理解したうえで分析する必要があります。

本コラムではそんなLTVについて、LTVを高める方法を交えつつ解説します。

LTV(ライフ・タイム・バリュー)とは

LTV(Life Time Value)とは?

LTVとは、「Life Time Value(ライフ・タイム・バリュー)」の略称で、日本語では「顧客生涯価値」と表現されます。

意味としては「とある顧客との取引が始まってから終了するまでの間に、企業に対しどれだけの利益をもたらすか」を表す指標となります。一度の取引ではなく、将来に渡る複数回のリピート購入や、定額で継続利用するサブスクリプション型の商材などで重要となる指標です。

LTVが高いということは、つまりその顧客が長期間にわたり、企業に対して安定的かつ持続的に利益をもたらす存在であることを意味します。
企業にとってLTVを向上させることは、単に新規顧客を獲得する以上に重要な戦略とされます。
なぜなら、既存顧客を維持し続けることでマーケティングコストを削減できるだけでなく、顧客のロイヤルティを高めることで口コミや紹介を通じた新たな顧客の獲得も期待できるからです。

また、LTVの高い顧客は通常、商品やサービスに対する満足度が高く、ブランドに対する信頼も深い傾向があります。
このような顧客は、企業の収益を安定させるだけでなく、市場での競争力を維持するための強力な支えとなります。
そのため、企業はLTVを向上させるための施策として、CX(顧客体験)の向上、パーソナライズされたサービスの提供、アフターサポートの充実などに力を入れる必要があります。

最終的に、LTVを効果的に活用することで、企業は長期的な成長を目指し、持続可能なビジネスモデルを構築することが可能となります。

LTVが注目される理由

サブスクリプション型ビジネスの急増

LTVが近年注目を集めるようになった理由としては、サブスクリプション型ビジネスの急増にあります。
サブスクリプション型のビジネスは2015年頃から徐々に増え始め、新型コロナウイルスの影響などでSaaS(Software as a Service)の増加に拍車がかかったこともあり、継続的な顧客との関係性が重要視されるようになり、LTVが注目されるようになりました。

人口減少、サービスの過多による市場の飽和

日本の人口は年々減少を続けており、様々な市場において需要が減少を続けていくことが予想されています。
それに対して、現在の日本では多くの市場においてすでにサービスが需要を超えて供給過多(レッドオーシャン)になっており、新規顧客を獲得することが非常に難しくなっています。

また、新規顧客の獲得には、既存顧客の5倍のコストがかかると言われています。(1:5の法則)
新規顧客の獲得が困難かつ高コストなため、顧客単位の収益を伸ばすことが重要視されるようになったことから、LTV向上の手法が着目されています。

 

上記のような理由から、近年は自社の商品に対する顧客の愛着や信頼を示す「顧客ロイヤルティ」の重要性が再認識されており、その結果LTVという指標の重要性が増してきています。
それに伴い、短期的な売上を求める方向から、長期的に顧客がもたらす価値を高めていく方向にマーケティング施策の軸足が移ってきています。
また、各企業においてLTVを高めるためのカスタマーサクセスの存在も重要視されてきています。

LTVの計算方法

LTVは対象とする製品種別や、計算の厳密さによって多様な計算方法が存在します。
ここでは、いくつか代表的なものをご紹介します。

なお、LTVは全顧客のデータを基に平均値を計算して算出する方法が一般的ですが、個別の顧客の価値を評価したい場合には、個別にLTVを計算することも有効です。

計算方法計算式

①シンプルな計算式

LTV = 平均購入単価 × 平均購入回数(回/年) × 平均継続期間(年)

②利益ベースでの計算式

LTV = 平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入回数(回/年)× 平均継続期間(年)

③サブスクリプション型の場合LTV = 平均購入単価 ÷ チャーンレート(解約率)
④サブスクリプション型の場合(利益ベース)LTV = 平均購入単価 × 粗利率 ÷ チャーンレート(解約率)
⑤必要コストを考慮した場合LTV = ①~④ -(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)

例1:下記条件で②の計算式を用いた場合
  「平均購入単価:10,000円」 
  「粗利率:60%」
  「平均購入回数:4回/年」
  「平均継続期間:3年」
  10,000円×60%×4回×3年で、LTVは72,000円となります。

LTV計算式の例

例2:下記条件で④の計算式を用いた場合
  「平均購入単価:5,000円」 
  「粗利率:70%」
  「チャーンレート:5%」
  5,000円×70%÷5%で、LTVは70,000円となります。

LTVに関連する指標の簡単な説明

CAC(Customer Acquisition Cost):総顧客獲得コスト ÷ 新規顧客数

顧客獲得コスト。新規顧客を獲得するためにかかる平均的な費用です。LTVと比較することで、投資対効果を評価できます。

MQL(Marketing Qualified Lead)

マーケティング活動により創出されたリード(見込み顧客)。営業チームがアプローチする価値があると判断されたリードです。

AOV(Average Order Value):総収益 ÷ 総注文数

平均注文額。顧客が一回の取引で平均的に支払う金額を示します。

NRR(Net Revenue Retention):((開始時MRR + 拡張MRR - 縮小MRR - 離脱MRR) ÷ 開始時MRR)× 100

開始時MRR: 一定期間の始めの月次経常収益
拡張MRR: 追加販売やアップセルによる増加収益
縮小MRR: ダウンセルやサービス縮小による減少収益
離脱MRR: 顧客離脱による失われた収益

ネット収益維持率。既存顧客からの収益がどれだけ維持されているかを示す指標で、LTVの評価に重要です。

ARPU(Average Revenue Per User):総収益 ÷ 総ユーザー数

ユーザーあたりの平均収益。一定期間内に顧客一人から得られる平均収益を示します。

ARPA(Average Revenue Per Account):総収益 ÷ 総アカウント数

アカウントあたりの平均収益。特にB2Bビジネスで用いられ、顧客アカウント一つあたりの平均収益を示します。

ユニットエコノミクス(Unit Economics): LTV ÷ CAC

ビジネスにおいて商品やサービス1単位あたりの収益とコストを詳細に分析する手法です。
これにより、個々の取引が利益を生むかどうか、どの部分が改善の余地があるかを評価し、全体の収益性や成長可能性を見極めます。

LTVを高めるためには

LTVの値を高めるには、計算に用いている各項目の値を改善していく必要があります。
しかし、当然ですが単純に購入単価を上げればよいといった簡単な話ではありません。
価格を無理に上げると、顧客満足度やリピート率が下がる可能性もあります。そのため、主な施策としては以下の3つが考えられます。

1.「アップセル・クロスセル」による顧客単価の向上
2.購入回数(リピート率)の向上
3.チャーンレート(解約率)の低下

これらの施策は、顧客満足度や顧客のロイヤルティ(愛着)を高めることで達成できる可能性があります。
具体的には、製品の品質向上、サポートの充実、マーケティング活動の強化などがあります。

「アップセル・クロスセル」による顧客単価の向上

LTV(顧客生涯価値)を高めるための顧客単価向上の有効な手段として、「アップセル」と「クロスセル」があります。
アップセルとは、現在の購入商品よりも上位の商品やサービスへの移行を促すことです。例えば、ECサイトでは、より高性能なモデルや追加機能を持つ商品をレコメンドすることで、顧客に上位モデルの魅力を伝え、納得してもらうことが重要です。

一方、クロスセルは関連する製品やサービスの購入を促す手法です。顧客が一度購入を決めた商品に対して、関連商品やセットパッケージを提案することで、購入品数を増やすことができます。ECサイトのレコメンド機能は、このクロスセルを効果的に実現するツールとして活用されています。

ただし、これらの手法を実施する際には注意が必要です。結果としての価格の引き上げは顧客離れのリスクを伴います。そのため、価格に依存しない製品設計や、製品のメリットを顧客にしっかりと伝える取り組みが求められます。特に、製品やサービスの唯一無二の強み(USP)が価格面にある場合は、慎重な対応が必要です。顧客に対して、値上げ以上の価値を感じてもらえるようなコミュニケーションを心掛けましょう。

購入回数(リピート率)の向上

顧客が再度商品を購入する可能性を高めるためには、CX(カスタマー・エクスペリエンス)を向上させることが重要です。例えば、商品の品質を高めたり、カスタマーサービスを充実させたりすることで、顧客の満足度を高め、リピート購入を促すことができます。また、ポイントシステムや購入者限定の割引や特典を提供するといったロイヤルティプログラムも有効です。

さらに、適切なタイミングでのメールマガジンやSNSによる購入リマインドなど、顧客毎にパーソナライズされたマーケティングもリピート購入を促進する効果があります。

チャーンレート(解約率)の低下

チャーンレートを下げるためには、顧客の問題を解決するためのサポートを提供することが重要です。具体的には、製品の使用方法やトラブルシューティングに関する情報を提供する、質の高いカスタマーサポートを提供する、離脱要因を早期に特定して対策を講じることなどが必要です。

また、チャーンレートを改善するためにはデータの分析が不可欠です。顧客の行動データ収集や、顧客からのフィードバックを活用して製品やサービスを改善する必要などがあります。これらの取り組みにより具体的な改善策を講じることで、チャーンレートを低下させることができます。

LTVを高めるためのカスタマーサクセスの存在意義と重要性

カスタマーサクセスは、顧客が製品やサービスから最大の価値を引き出すことを支援する部門です。
カスタマーサクセスチームが顧客のニーズを理解し、適切なサポートを提供することで、顧客満足度を向上させ、チャーンレートの低下に貢献します。
これにより、顧客との長期的な関係を築き、LTVを向上させることができます。

LTV向上に向けたカスタマーサクセスの具体的な行動例を以下に示します。

オンボーディングの強化

新規顧客がスムーズに製品やサービスを利用できるよう、オンボーディングプロセスを整備します。具体的には、初期設定のサポートや使い方のトレーニングを提供し、顧客が早期に価値を実感できるようにします。

プロアクティブなサポート

問題が発生する前に顧客に対して積極的にアプローチし、予防的なサポートを提供します。
例えば、定期的なチェックインや利用状況のモニタリングを通じて、顧客のニーズや問題点を早期に把握し、対応します。

データドリブンなアプローチ

顧客の利用データを分析し、パターンや傾向を把握します。
これにより、個々の顧客に合わせた最適なアクションを提案し、顧客満足度を高めることができます。
例えば、利用頻度が低下している顧客には、利用促進のためのキャンペーンを実施するなどの対応が可能です。

エデュケーションとトレーニング

顧客が製品やサービスを最大限に活用できるよう、ウェビナーやワークショップ、オンラインチュートリアルなどの教育リソースを提供します。
これにより、顧客が製品の価値を最大限に引き出せるようになります。

パーソナライズされたコミュニケーション

顧客一人一人に合わせたコミュニケーションを心がけます。
顧客の利用履歴やフィードバックに基づいて、パーソナライズされた提案やサポートを提供することで、顧客との関係を深めます。

フィードバックの収集と改善

顧客からのフィードバックを積極的に収集し、製品やサービスの改善に活かします。
顧客の意見を反映することで、製品の品質向上や新機能の追加に繋がり、顧客満足度を向上させることができます。

最後に

LTVを高めることは、企業の長期的な収益性を向上させるために重要です。
アップセルやクロスセルによる顧客単価の向上、リピート率の向上、チャーンレートの低下といった具体的な施策を実施することで、LTVを効果的に高めることが可能です。
また、データ分析を駆使してチャーンレートを改善し、カスタマーサクセスを強化することも重要です。

LTVの向上は、単なる売上増加だけでなく、顧客との強固な信頼関係を築くことにも繋がります。
データ分析と戦略的な施策を組み合わせ、顧客に対する価値提供を最大化することで、持続可能な成長を実現しましょう。

企業の成功は、顧客の成功と密接に関連しています。
顧客の満足度と信頼を得ることで、LTVを最大化し、長期的なビジネスの繁栄を目指しましょう。

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