SaaSの連携方法とそのメリットを解説|データ連携でSaaSのチカラを最大限に
現代の日本のビジネス環境において、SaaS(Software as s Service)の導入が進んで久しく、現在においては業種を問わず多くの企業でSaaSが導入されています。
日本におけるSaaSの導入は欧米の先進国と比較するとやや遅れていましたが、近年は、コロナ禍によるリモートワーク推進需要や、人手不足に対応した生産性向上のために、日本企業のSaaS導入は加速が進んでいます。
本コラムでは、SaaSの連携方法とそのメリット-SaaS連携でSaaSのチカラを最大限にする方法-について説明していきます。
目次
SaaS導入に伴う今後の懸念点
今後一企業内で複数のSaaSが導入されることにより想定される懸念点が「サイロ化」です。
「サイロ化」とは、企業が複数のSaaSを導入したことにより、組織内での情報や業務が部署やシステムごとに独立して分断され、情報共有が不十分になったり、業務が重複して発生したりする現象を指します。
日本企業におけるSaaS導入が進むと、以下のような形でサイロ化が懸念されます。
データの分断と不整合
例えば、社員のデータや取引先情報が複数のSaaS内に重複して存在し、個別に管理、更新作業を行うことにより情報の不整合を生じさせることがあります。
これにより、余分な手間とコストがかかるだけでなく、情報の不整合が原因でトラブルが起きる可能性もあります。
業務の重複と無駄
部門ごとに異なるSaaSを導入して運用していた場合、例えばスケジュール管理など、同じ目的の機能が重複する場合があります。
そういった機能の重複は導入コストに無駄が生じます。
また、同一目的の業務を行っているのにシステムが異なるため手作業での入力作業が発生するなど、生産性の低下も招きます。
情報の利用困難と意思決定の遅れ
データがサイロ化すると、必要なデータがどこにあるか分からなくなるなど、情報共有の不備や遅れなどにより、経営判断に必要なデータが効率的に集められず、全社視点でのデータ活用が難しくなります。
これにより、意思決定の遅れやビジネスチャンスの逃失が生じます。
SaaS連携の必要性とメリット
SaaSの導入数が増加してくることによって生じるサイロ化への対策として、SaaS間のデータ連携が挙げられます。
SaaS間の連携とは、異なるSaaSプラットフォーム間でデータや機能を共有し、相互に連携させることを指します。
これにより、ユーザーは複数のSaaSを個別に使用する代わりに、シームレスな社内業務を実現することができます。
SaaS連携のための具体的な手段としては、主に
- 公式の連携アプリを使用する
- 直接システム間をつなぐ開発を行う
- iPaaSなどのツールを使う
などの方法が考えられます。
詳しく説明します。
SaaS連携の方法
公式の連携アプリを使用する
使用しているSaaSメーカーから、他SaaSとの連携を行うためのアプリが提供されている場合があります。
公式連携アプリの利点としては、導入に対して専門的な知識は必要なく、設定も比較的簡単に行えるケースが多い点です。
注意点としては、公式アプリの場合は機能が限定されているため、何か特定の目的で連携を実現したい場合に、その目的に沿った機能があるかを確認する必要があります。
例えば、クラウド会計ソフトfreeeのホームページ上で、他SaaSとの連携アプリが公開されています。
https://app.secure.freee.co.jp/
直接システム間をつなぐ開発を行う(スクラッチ開発)
使用しているSaaS同士で特定の連携を実現するために、直接開発を行ってしまうという方法です。
豊富なAPIが用意されているSaaSであれば、まるでひとつのSaaSを使っているような感覚で複数SaaSを連携させることが可能になります。
ただし、開発を行う際には、対象となるSaaSがAPIを公開している(オープンAPIである)かどうかが大切なポイントとなります。
APIが公開されていない、またはAPIが存在しない場合は、そのSaaSの機能が外部に提供されていないため、開発を行うことが難しい、もしくは不可能となります。
そのため、開発を行う前には必ず対象SaaSがAPIを公開しているかを確認することが重要です。
API連携を検討する際に、自社で開発するのか外部に開発を依頼するのかにより難易度が変わります。
自社で連携開発する場合
自社開発は、企業が内部のリソースと専門知識を活用してSaaS連携を行う方法です。
この手法は、SaaS連携の要件が特別で、市場に存在する既存のソリューションで満たせない場合に適しています。
自社で開発することで、連携の仕組みを完全に制御し、企業の特定のニーズに合わせてカスタマイズすることが可能です。
しかし、自社開発においては「実行回数」や「実行時間の制限」といったAPIに関する専門的な知識や技術スキルを必要とし、仕様変更に対する保守、追加開発といったコストがかかります。
外部に連携開発を依頼する場合
専門の開発会社に依頼してSaaS連携を行う方法です。
この方法は、自社では持っていない専門的な知識や技術を必要とする場合や、開発にかかる時間を短縮したい場合に有効です。
ただし、開発コストは高くなる可能性があります。
また、外部企業に依存する形になるため、運用の自由度が制限されることもあります。
iPaaSなどのツールを使う
外部ツールを使用する手段としては、主に以下のようなものがあります。
これらの手段を適切に組み合わせることで、SaaSのサイロ化を防ぎ、業務効率を大きく向上させることが可能になります。
①RPAの活用
RPA(Robotic Process Automation)とは、定型的な作業をロボットを用いて自動化する技術です。
RPAを使用すると、人間が行っていた入力作業などを自動化することができ、作業の効率化やミスの削減が期待できます。
RPAは一度設定を行うと定型的な作業を繰り返すため、対象となる社内業務の内容によっては定期メンテナンスが必要になる場合があります。
反復的な業務を自動化するのに役立ちますが、複雑な判断や創造的な業務には適していません。
また、RPAで複数のシステムを連携させるのは難易度が高いケースがあります。
②ETLツールの活用
ETL(Extract, Transform, Load)とは、大量のデータを異なるデータソースから抽出(Extract)、適切な形式に変換(Transform)、そして目的地にロード(Load)するプロセスを指します。
その一連の流れを実現するソフトウェアツールであるETLツールは、異なるSaaS間でのデータの移行や統合を効率的に行うことができます。
しかし、ETLツールはデータの形式や量によっては専門的なスキルが必要となることがあります。
③iPaaSの活用
iPaaS(Integration Platform as a Service)とは、クラウド上で提供される統合プラットフォームのことを指します。
異なるソフトウェアアプリケーションやデータソースを相互に連携させることができ、企業は複数のSaaSアプリケーションや、オンプレミスとクラウド、異なるクラウドサービス間など、様々な環境とのデータ連携を効率的に実現することが可能となります。
iPaaSはユーザーに対してローコードまたはノーコードの開発環境を提供していることが多く、開発者ではないユーザーでも直感的に統合プロセスを構築および管理できる点も特徴的です。
▼iPaaSの詳細はこちらのコラムもご覧ください。
iPaaS(Integration Platform as a Service)とは?Embedded iPaaS(組込み型iPaaS)とは?|SaaS連携の専門家が分かりやすく解説!
SaaS連携方法の選び方
以上のような手段を組み合わせて活用することで、SaaSのサイロ化を防ぎ、業務効率を向上させることが可能です。
企業は自社のニーズに応じて最適な手段を選択し、SaaS連携を進めていくことが求められます。
SaaS連携の手段を選択する際には、自社のITリソース、予算、セキュリティ要件、そして目的に応じて最適な選択を行うことが重要です。
また、連携の運用管理と保守についても考慮する必要があります。
SaaS連携をストレスなくシームレスに行うことでSaaSのコア機能の恩恵を受けることができ、SaaSの持つチカラを最大限に活用できるようになるのです。
ここ数年は、必要なSaaSだけを選び組み合わせるコンポーネントERPという思想が広まったことを背景に、他SaaS・外部システムとの連携が豊富なSaaSが多く存在します。
まずは公式の連携アプリが用意されているか確認し、なければiPaaSなどのツールを調べてみる、それでも実現が難しければ連携開発を検討するとよいでしょう。
SaaS連携開発やAPI開発支援でお困りの方へ
多くの企業で、1社あたり10程度のSaaSを利用しているといわれています。
それだけSaaSは多くの企業に必要とされていることがわかります。 しかし、複数のSaaSを利用することで情報の分断や多重入力といった問題が起こるリスクがあります。
業務の効率化を求めて導入したはずなのに、複数のSaaS利用によって新規導入や効果的な運用の足かせとなることがあるのです。
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