バーティカルSaaS(Vertical SaaS)とは?ホリゾンタルSaaSとの違いは|建設業でバーティカルSaaSが注目される理由を解説
数あるSaaSの中でも、業界特化型のいわゆる「バーティカルSaaS」と呼ばれる分野が国内でも盛り上がりを見せています。
本記事では建設業を例に、バーティカルSaaSが注目される理由とユーザーエクスペリエンスの重要性を、建設業におけるバーティカルSaaSの具体例を交えて解説します。
この記事が、今後のSaaSベンダーにとって何が必要かを考えるきっかけにしていただければ幸いです。
目次
バーティカルSaaS(Vertical SaaS)とは
バーティカルSaaS(Vertical SaaS)とは、Vertical=垂直 の意味通り、建設・介護・不動産など特定の業種・業界に特化したSaaSのことで、現在急速に市場が拡大しています。
業種・業界特有の課題解決を主な目的として提供されています。
建築業を例にあげると、建築図面管理システム・案件管理アプリなどが挙げられます。
特定業界への特化からくる市場独占のしやすさと、高い参入障壁による競争の少なさが強みといえます。
ホリゾンタルSaaS(Horizontal SaaS)との違い
ホリゾンタルSaaSとは、業界・業種に関わらず使用できるSaaSです。
Horizontal=水平 の意味通り、一般的な企業活動で必要とされるSaaSがホリゾンタルSaaSです。
例えば人事・会計・チャットツールなどの機能を有するSaaSが当てはまります。
SaaSといえばホリゾンタルSaaSを指している場面が多く見られます。
建設DX戦国時代の幕開け
現在、日本の産業は少子高齢化による人手不足と、グローバルな競争環境での競争力の低下という二重の課題に直面しています。この課題に対処するためには、早急な生産性の向上が不可欠です。そのため、現在様々な業界においてDX(デジタルトランスフォーメーション)化が急速に進んでいます。
GAFAMをはじめとした国際的なIT企業による新たなテクノロジーの導入や、国内のスタートアップ企業の台頭などによって、現在日本の産業においてもDX化が急速に進んできています。
しかしながら、建設業界はかねてよりDX化が遅れていると言われています。この遅れの理由は、例えば技術の導入における困難さや、業界特有の特徴による影響などが挙げられます。
今後は、建設業界におけるDX化の推進が急務となります。国内の建設業向けSaaSも急速に増えてきており、今後新たに建設業向けSaaSに参入する企業も増えてくるでしょう。
今後様々なデジタル技術の積極的な活用や、業界全体での情報共有の促進など進むことにより、建設業界も他の業界と同様に生産性を向上させ、持続可能な発展を実現することが期待されます。
建設業のDX化が遅れている理由
製造対象が規格化できない
建設業は通常の製造業と異なり、作成する成果物が毎回異なり、画一的な様式やシステムの導入による業務改善が難しいという側面があります。
現場の多様性
建設業は天候や地形などによって作業進捗が左右されるという特性があります。
悪天候によって工期が圧迫されれば、それに応じて作業工程を変更するなど臨機応変な対応が求められるため、これもシステム対応を難しくしている要因となります。
複数の企業が関わる(企業間DX格差の存在)
建設業界は、多くの建設業者同士が関与しながら仕事を進めていきます。
施工管理を主体とする元受け、現場作業を主に進める下請け、孫請けといった協力会社が多く存在しますが、下請け専門会社には高齢な一人親方による零細企業なども多く、デジタル化が進まない原因となっています。
仮に元受け会社だけがDX化を推進しても、正しくメリットを享受できないといった問題があります。
業界全体の高齢化が進んでいる(DX化に対する不安、理解不足)
建設業は就業者の55歳以上が35.9%、29歳以下が11.7%と※、全産業で最も高齢化が進んでいる業種となります。
紙や電話・FAXを使ったアナログな情報伝達が基本となっている事業者も存在します。
従業員もデジタル化に対して抵抗を感じるという人が多く、DXツールを使いこなせない、そもそも導入に反対されるといったケースもあります。
※出典:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」より
高度な専門知識が必要
建設業界は様々な領域で高度な専門知識が必要となります。
その内容も非常に多岐にわたるため、一律のITツールの導入で改善が行いにくいという特徴があります。
職人の勘や技術、経験値などが重視される側面もあるため、特にデジタル化とは相性が悪い業種といえるかもしれません。
【デジタル化と相性が悪い領域】
そもそも業種が多岐にわたる
⇒土木、水道、建築、電気…など、29の業種に分かれ、それぞれ専門性が異なり、一つのツールで対応できないケースがある。
設計変更が多い
⇒成果物の作成途中に現場の状況などから図面や見積りの変更などが現場で頻繁に発生する。(当初の計画通りに進まない)
取引先に官公庁が多い
⇒いわゆる公共工事(官公庁を相手とした仕事)では、書類の提出様式などを官公庁側に指定されることも多く、自由なDXツールの使用に影響を与えることもある。
職人の勘や経験といったブラックボックス化された情報に基づいて作り上げられている領域がある
⇒そういった現場の経験値から培ってきた情報は、見える化や、次世代への継承が難しい。
UX(ユーザーエクスペリエンス)の重要性
上記で示したように、建設業にはITスキルが少ない年配の働き手が多いのが現状です。
だからこそ、SaaS企業はUX(ユーザーエクスペリエンス※)に焦点を当てることが強く求められます。
つまり、直感的で誰にでも使いやすいSaaS製品の開発が求められています。
※「ユーザーエクスペリエンス(UX)」とは、製品やサービスを使用する際にユーザーが感じる全体的な印象や体験のことを指します。良好なユーザーエクスペリエンスは、使いやすさや満足度を高めるためにデザインや機能を最適化し、ユーザーが目的を達成しやすくすることを目指します。
「使いやすいUI」の効果
「使いやすさ」はSaaS導入を検討する建設業者にとって非常に重要な要素です。
建設業に従事する職人気質の人は、「自分で触って覚えたい」というタイプの方が多く、ぱっと見でわかりやすいUI※デザインが好まれます。
※「ユーザーインターフェース(UI)」は、ユーザーが製品やソフトウェアとやり取りするための手段や仕組みのことを指します。具体的には、ボタン、メニュー、フォームなどの視覚的要素や、タッチスクリーン、マウス、キーボードなどの操作機器が含まれます。
また、建設業では事務所などのオフィス空間ではなく、現場事務所といわれるプレハブや、屋外の建設現場など、集中しずらい環境において入力作業などを行うことも多いため、わかりやすく、入力手数の少ないUIデザインであることも求められます。
特に、ITツールに自信がない年配の建設従業者にとって使いやすいと感じられるかどうかは必須の要素です。
その他に、業種によっては山間僻地や地下など、インターネット接続が難しい場所での作業が発生することもあります。オフライン状態でもエラー無く使用できることもUXを向上させるために重要な要素です。
建設現場においては一つのミスが大きな事故を招くこともあるため、入力ミスやユーザーエラーを引き起こしにくい直感的でシンプルな設計のITツールは、建設従業者に安心感を提供することにつながります。
学習時間の短縮と生産性の向上
新しいソフトウェアを導入する際の学習時間は、使いやすいソフトウェアであれば必然的に短縮できます。これは生産性向上に直接つながります。
適切なサポートの提供と、社内にITツールに詳しい人材がいれば、社内での定着も早まるでしょう。
しかし建設業の場合、使用するユーザーは必然的に高齢従業員の割合が増えますので、ITツールに詳しい人材がいない場合も多く、導入に関しては特に慎重になる傾向があります。
また、現場が常に動いており、落ち着いて学習時間が取れないという建設業者がほとんどでしょう。
そのため、導入に長期的な時間を割くことが難しい場合が多いです。
建設業の場合、「導入してから定着まで時間がかかる=導入失敗」ととらえられるケースが非常に多いです。
建設業者の規模にもよりますが、大半を占める中小零細企業にとっては、「少ない手数で触っているうちに自然と覚えることができ、生産性の向上を数値ではなく体感で感じられる。」というのが建設業向けITツールの理想形といえるでしょう。
バーティカルSaaSの台頭
2017年に経済産業省がDXを推進するために開始した「IT導入補助金」の追い風もあり、国内のDX化は徐々に進んできましたが、他の産業に比べ建設業においてはなかなか進んでいませんでした。
しかし、「バーティカルSaaS企業」がそのニーズを捉え、業界のDX化をサポートする存在になってきています。
最近、特定の業界向けのSaaS、つまり前述のバーティカルSaaSが注目を集めています。
2023年上期には多くのスタートアップ企業などで資金調達がありました。
その背後には、日本の産業が抱える深刻な人手不足や生産性の問題があります。
特に建設業界では、法改正による労働者不足が予想されている「2024年問題※」などで、時間的制約が切迫した状況にあります。
※2024年問題とは
バーティカルSaaSとUX
バーティカルSaaSは、特定の業界の特性やニーズに対応した製品開発を行い、ユーザー特性に合わせた最適なソリューションを提供しています。
そのため、建設業界のような特殊なニーズを持つ業界では、バーティカルSaaSが大きな役割を果たすことが期待されています。
UXを重視した製品開発と、業界特有の課題解決を目指すバーティカルSaaSの組み合わせは、建設業界のDX化を急速に加速させています。
今後も多くのバーティカルSaaSの参入が予想され、具体的な業界の課題理解と、それに対応した製品開発が期待されています。
バーティカルSaaSは、建設業界におけるDX化を具現化する強力なツールとして、これからの建設業界においてに注目が集まっています。
建設業向けバーティカルSaaS紹介
建設業向けSaaSを開発・提供している企業の一例をご紹介します。
株式会社Arch
▽画像出典元:「Arch」公式HP
建設業、建機レンタル業向けデジタルサービス「Arch(アーチ)」を提供。
スパイダープラス株式会社
▽画像出典元:「SPIDERPLUS」公式HP
現場業務をラクにして”働く”にもっと「楽しい」を創造する建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS(スパイダープラス)」を提供する。
株式会社H2Corporation
▽画像出典元:「KISOプラットフォーム」公式HP
建設業務をクラウドとAIで一元管理する「KISOプラットフォーム」を提供する。
株式会社アンドパッド
▽画像出典元:「ANDPAD」公式HP
現場の効率化から経営改善まで一元管理できるクラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD(アンドパッド)」を提供する。
株式会社GACCI
▽画像出典元:「GACCI」公式HP
プレコンストラクション(設計から施工までの間に行われる業務)領域を取り扱い、見積業務を最適化するクラウド型SasSサービス「GACCI(ガッチ)」を提供する。
株式会社MCデータプラス
▽画像出典元:「グリーンサイト」公式HP
施工体制台帳/労務・安全衛生に関する書類を、クラウド上で簡単に作成・提出・確認できる労務安全書類作成・管理クラウドサービス「グリーンサイト」を提供する。
燈株式会社
▽画像出典元:「Digital Billder」公式HP
建設業向け請求書処理業務DXサービス「Digital Billder(デジタルビルダー)」を提供する。
ユーザーエクスぺリエンスとバーティカルSaaSの可能性
建設業界はその市場規模が約62兆円と大きく、2024年問題などの注目度の大きさなどから、今後もDX化に向けたSaaS導入や、周辺オプションサービスでの売上拡大に大きな期待が寄せられています。
DX化の波に乗ってビジネスの未来をつかむためには、建設業の特性を理解したユーザーエクスペリエンスの最適化と改善から始まります。
建設業は、インフラの整備・維持管理等を通じて良質なインフラサービスを提供するとともに、地域. 住民の安心・安全を確保し、地域経済を活性化する上で必須の存在であり、決して無くなることはありません。
公共事業に対する予算投資も、平成25年以降増加の傾向※にあり、今後の建設業者のさらなる設備投資にも期待が持てます。
※出典:国土交通省「令和5年度予算概要」より
建設業向けバーティカルSaaSはその業界特性から、今後のさらなる発展の可能性は無限大にあると言えるでしょう。
SaaS連携開発やAPI開発支援でお困りの方へ
現在建設業向けSaaSベンダーが増えてきています。今後建設業においても複数のSaaSを導入する企業が増えてくるでしょう。
他の業種では多くの企業で、1社あたり10程度のSaaSを利用しているといわれています。
それだけSaaSは多くの企業に必要とされていることがわかります。 しかし、複数のSaaSを利用することで情報の分断や多重入力といった問題が起こるリスクがあります。
業務の効率化を求めて導入したはずなのに、複数のSaaS利用によって新規導入や効果的な運用の足かせとなることがあるのです。
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